(下仁田) 妙義山石門めぐり――日本三大奇景を体感する

(2017年10月4日)

 日本三大奇景にも選ばれている妙義山は、日本有数の登山の難易度が高い山でもある。しかし、中には比較的気軽に登ることができるコースもある。今回は、妙義山の中でも人気の高い石門めぐりコースを巡ってみた。このコースは1時間~1時間半程度で巡ることができるので、気軽に妙義山の魅力を堪能することができる。

 妙義山は国の名勝に指定されており、日本三大奇景、日本百景にも選定されている景勝地である。上毛三山の中では最も低く、最高地点は相馬岳(富岡市・安中市境)の標高1,104mだ(榛名山は1,449m、赤城山は1,828m)。しかし、切り立った崖や奇岩、山全体を覆う広葉樹林、そして登山家でも登頂を断念することがあるという登山難易度の高さなど、個性の強さでは際立っている。群馬県・群馬県山岳団体連絡協議会が作成している「群馬県 山のグレーディング」でも、難易度D以上が指定されている登山ルートは妙義山のものだけだ。

 しかし、その妙義山でも、比較的気軽に山を楽しむことができるルートはある。今回はその中で、妙義山の石門めぐりコースを歩いてみた。1時間~1時間半で気軽に回れるコースながら、石門をはじめとする奇岩もあり、鎖場のスリルもあり、見晴台からの絶景もありで、妙義山の登山コースではバランスの良いコースだ。先の「群馬県 山のグレーディング」では、鎖場があるために難易度Cにランキングされているが、危険な場所も少なく、また鎖場を通らずに巡ることもできるようになっている。

 なお、筆者は登山経験も運動の習慣も特になく、ふだんはデスクワークが中心の生活をしている人間であることを書き添えておこう。

スタートから第一石門まで

 石門めぐりコースのスタート地点としては、県道妙義山線(196号)の中ほど、中之嶽神社前にある県立妙義公園駐車場が便利だ。ここで準備を整える。

 石門めぐりコースは一般向けのコースであり、運動靴でも行くことができるが、できれば滑り止めのついた登山用の靴で臨むのが安心だ。また、第二、第三石門に行きたい場合は途中に鎖場があるため、両手を自由にできる装備(リュックサックなど)が必要だ。
 コース内には飲料水が確保できる場所もトイレもないので、必要に応じて飲料水を用意し、またトイレを先に済ませておこう。

 さて、鳥居の向こうにある巨大な大黒天像が目を引くが、ここでは県道を右方面(安中・富岡方面)に向かう。5分ほど県道を歩くと、左手(山側)に「名勝 石門群登山道」と書かれた階段の入口が見えてくる。ここからが本格的な登山道だ。

石門めぐり登山道の入口

 登り始めてまもなく、「かにのこてしらべ」と書かれた鎖場が現れる。ここで鎖場を登る練習をすることができる。初めて見たときは少しびっくりするが、実際に鎖につかまって登ってみると、岩の上で足を置く場所にはくぼみがつけられており、登る高さもそう高くはないので、初心者でも難なく登ることができる。なお、何らかの事情で鎖場を登ることができない場合は、横の道から登ることもできるようになっている。

第一石門

 登り始めて5分ほどで、早くも最初の石門、第一石門が現れる。第一石門は、岩沿いに現れた大きなアーチ状の岩で、その下をくぐれるようになっている。第一石門の周辺はふつうの登山道で、特に上るのが困難な道ではない。
 その奥には、妙義山の県立公園が設置された経緯を説明する石碑がある。それによると、柴垣はるさんという人が昭和29年7月にこの付近の土地を県に寄附したため、県立公園として整備されたそうだ。

難関の第二石門

 次の第二石門は、この石門巡りで一番の難関だ。第二石門は高い岩の上にあり、「かにの横ばい」と呼ばれる岩場(鎖場)を越えていかなければならないからだ。両手を空けられない人や鎖場を進む自信がない人は、少し引き返すと第三・第四石門方面へ鎖場のない登山道を進むこともできる。
 鎖場は鎖につかまりながら進むが、最初の「かにのこてしらべ」と同様、足を置くところにはほとんどにくぼみがつけられており、進むのはそう難しいことではない。その先、鎖をつかみながら「たてばり」と呼ばれるきつい坂を上ると第二石門だ。第一石門からおよそ10分で到着する。

 第二石門をくぐると、すぐに「つるべ下がり」と呼ばれる下り急斜面になっており、ほとんど鎖にぶら下がった状態でそろそろと下りる、コース中の最大の難所。その先、5分ほど進むと第一石門方面からの登山道と合流する。

 そこから3分ほど登ると、第三石門方面と石門広場(第四石門)方面への分岐点がある。第三石門への道には途中に短い鎖場があるので、鎖場を通れるならばまず第三石門に行ってみよう。第三石門まではさらに3分ほどで着く。鎖場はあるものの、道は比較的平坦なので楽に到着する。

 第三石門はくぐり抜けることはできないようになっている。素掘りのトンネルのような石門を見た後は、来た道を引き返し、石門広場までは3分ほどで着く。

石門広場と見晴台からの絶景

 石門広場は広くなっており、東屋やテーブルがあって休憩できるようになっている。その横にそびえるのが第四石門だ。細長くアーチ状になっている石門が美しい。写真で見ると小さく見えるが、見上げるような大きさには圧倒される(写真下部の手すりの大きさから想像してほしい)。

  その奥には大砲岩も見える。名前の通り、大砲のような姿をした奇岩だ。第四石門をくぐって大砲岩にも足を延ばせるようになっているが、大砲岩まで行く間にも鎖場がある。今回は大砲岩の方には行かなかった。

 石門広場から、中之嶽神社方面に向けて上り階段を上る。ここから先は道の整備状況が良く、歩きやすくなっている。出発して5分ほど、約260mで見晴台と書かれた案内板があるので、そこに入るとまもなく見晴台。
 見晴台には2つの岩があり、奥の岩には小さな祠がある。手前の岩は足場もあって、上に登ることが可能だ。手すりなどは用意されていないので、恐る恐る上ってみると、眼下には絶景が広がる(冒頭の写真)。絶景を存分に楽しもう。

 見晴台の近くには上級者向けの登山道との分岐点があるが、そこには一般登山者が入山しないよう、大きな看板で重ねて警告が表示されている。ザイルを使って登山をするような登山技術を持っていない限り、絶対にこちらに入ってはいけない。

そして中之嶽神社

 見晴台から10分ほど歩くと、中之嶽神社の裏手に出る。中之嶽神社は岩が御神体なので、拝殿と幣殿のみで本殿を持たない。幣殿が岩に突き刺さるように設けられている珍しい構造のものだ(榛名神社と同様の構造)。

 そこから長い階段を降りると、中之嶽神社の社務所や大國神社、そして日本一の大黒天像、休憩所や食堂などがある。一般に大黒天は木づちを持っていることが多いが、ここの大黒天像は大きいだけでなく、木づちの代わりに剣を持った姿であることも珍しい。
 ここが石門めぐりコースの終着点。神社に参拝した後、地下道で県道を渡ると、県立妙義公園駐車場に戻ることができる。

 

 この石門めぐりコースは、休憩時間を除けば約1時間で一回りすることができるので、気軽に楽しめるコースだ。見どころが5~10分ごとに次々と現れるし、道標も整備されている一方、鎖場のように妙義山の険しさの一端を感じることができるような場面もある(鎖場を通らずに一回りすることもできる)、バランスの良いコースだ。

 自然に親しむのはもちろん、ふだんの運動不足解消に挑戦してみるのも良いかもしれない。ただ、やはりそこは妙義山。くれぐれも体調や天候には注意し、雨の直後も避けた方が良いだろう。

 石門めぐりを楽しんだ後は、約7.5km(車で約15分)の場所に妙義温泉「もみじの湯」(富岡市)、約18km(車で約35分)の場所に西下仁田温泉「荒船の湯」(下仁田町)があるので、汗を流して休憩するのもよいかもしれない。

【行き方】

 公共交通の場合は、JR信越本線松井田駅または上信電鉄下仁田駅からタクシーで約25分。「中之嶽神社(なかのたけじんじゃ)」を目印に。

 車の場合は、上信越自動車道松井田妙義ICから約10km、約20分。下仁田ICから約18km、約35分。

(取材・文/藤本 理弘)


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